居抜き開業

2022.03.28

自分が独立しようと思ったとき、どんな風に物件を探しますか?
業種によって、求める条件は様々ですが今回は飲食店を始める場合に
検討することが多い、居抜き物件について説明をしていきます。

居抜き物件とは

ここで言う居抜き物件とは、もともとご商売をしていた店舗が撤退した設備の一部または全部を利用出来る物件のことです

全くの同業種であれば、全部を利用出来る場合もありますし、同じ飲食店でも役肉店の後にカフェとして利用したい場合などは厨房関係の一部を残して客席部分などは、新たにリフォームしたりと利用方法は様々です。

居抜き物件のメリット

私が考える居抜き物件を利用して開業するメリットは大きく二つあります。

開業費の削減

まず、一つ目のメリットは開業費用が抑えられる点です。通常、飲食店を開業する場合の費用のうちで最も資金が必要になるのが工事費用(厨房機器等も含む)です。
居抜き物件を利用した場合には、この費用がゼロから3~4割程度まで抑えることが可能です。居抜き物件を契約するときに必要となる、造作(もともとの設備等のこと)を買い取るための費用については後述します。

開業期間の短縮

そして、二つ目のメリットはオープンまでの期間が短縮出来る点です。もちろん現状にもよりますが、ほとんどの居抜き物件は、最近までは営業していた店舗ですので、物件の契約が出来れば即営業が可能です。当然、ご自身の業態にあわせてリフォームや設備の入れ替えなどもあるでしょうが、全くのゼロから工事することに比べると圧倒的に工期が短くなります。これは、不動産賃貸借の契約内容によって変わりますが、契約後は工事期間中であっても賃料が必要になる物件も少なくありませんし、仮に工事期間中は賃料が不要な場合でも、工事している間は売上が発生しない為、一日も早い営業開始は大きなメリットとなります。

居抜き物件のデメリット

先ほどは居抜き物件のメリットについて説明をしましたが、デメリットについては四つあります。

閉店した店舗というイメージ

まず一つ目は、居抜き物件というのは必ず廃業した店舗のあとになるということです。当たり前のことですが、よく考えて見て下さい!上手くいっているお店で廃業することはありません。最近ではコロナ禍によって、以前は繁盛店だったお店が閉店することもありますが、それでも閉店前は厳しい状況だったからこそ廃業という選択になったのだと思います。後継者の不在などで繁盛店を居抜きで引き継ぐケースもありますが、ごく稀なケースですし、そういう物件の場合には一般的な不動産市場には出てくることはありませんので注意が必要です。

もちろん、業種や業態によって同じ店舗でも結果は全く違いますし、経営者によっても改善出来ることも多々ありますが、少なからず前のお店のイメージというのは引き継ぐことになります。単に自分だったら、もっと上手くやれる!というのは得てして失敗する原因となりますので、謙虚に判断することが必要です。

店舗レイアウトの制限

居抜き物件のメリットが工事費用を安く抑えることが出来る点にあるということを先ほど説明しましたが、あくまで現状のレイアウトを活かした場合です。自分なりに接客の導線を考えたりしたい場合でも、現状のレイアウトを大きく変えることは出来ません。正確には可能ですが、工事費用などは逆に高くなってしまいます。

設備等の不具合

三つ目のデメリットは、居抜き物件についてくる設備等については保証がない点です。使えると思っていた冷蔵庫が使えなかったり、ガスコンロが営業を始めてすぐに故障したりと、もともと営業していたお店だからこそのトラブルがついてきます。

私の経験の中で一番大きな設備の不具合は、換気設備が構造的に十分に機能していなかった為、換気設備を丸ごとやり直したことがあります。

複雑な契約関係

最期のデメリットとしては、契約関係が複雑になる点です。そもそも居抜き物件は賃貸物件がほとんどですが、物件の賃貸契約の貸主さんは、もともとのお店を経営していた方ではありません。あくまで物件の契約は貸主さんと契約するもので、前のお店の経営者さんは全く関係がないのです。しかし、店舗に備え付けられた内装や厨房機器などの設備については前のお店の経営者さんのものです。ただ、これらの設備等については通常の賃貸契約では原状回復をした上で、解約時にスケルトンにする必要がある場合が多く、廃業にあたって余分な費用を払いたくない前の経営者さんが、居抜きで営業出来るメリットのある物件として、そのまま利用できる物件があるという提案をしているだけなのです。

ここで、居抜き物件には大きく三つのパターンがあります。

①貸主は、まだ何もしらない

②貸主が居抜きで、新しい借主に利用させることを承諾している

③店舗は既に退去済みで、貸主として居抜き物件を募集している

居抜き物件の開業としては①~③にかけて、段階的にハードルが下がります。

もっともハードルが高いのが①の貸主は何も知らない場合です。現在、営業中の店舗で居抜きで物件を引き継ぐことを、今の店舗の経営者と決めた後に、貸主に居抜きでの契約の相談をした結果、契約の引継ぎや再契約は認められない…といったケースもある為、最も注意が必要です。

居抜き物件の契約費用とは

最期に、居抜き物件を契約するときに必要となる費用を説明します。
基本的には、通常の賃貸借契約と同じになる為、敷金・礼金や前家賃、仲介手数料というものになってきますが、一般的な費用についての説明は省略させて頂きます。
居抜き物件で、通常の契約と大きく違う点が「造作譲渡金」です。呼び方は地域などによっても違って什器備品譲渡金などと言っている場合もあります。

これは、居抜き物件として前経営者が残していく内装や厨房機器等の設備の買取金のことです。普通の賃貸借契約や売買契約であれば、設備の性能保証などもありますが居抜き物件の場合には基本的に保証はありません。また、店舗の内覧をした際にあったものが、契約後になくなっている…ということもあるので必ず譲渡の対象として含まれるものについてはリストを作成するなどして、しっかりと確認をする必要があります。ひどいケースだと契約後に譲渡物だと思っていたものがリース契約であった場合などは、リース会社と再契約が必要になることもあります。

まとめ

居抜き開業は、通常の開業と比べて費用を抑えて開業出来るなどメリットも多くありますが、実はデメリットもメリット以上に存在します。メリットの部分だけを見るのではなく、デメリットもしっかりと確認した上で、居抜き物件を利用して開業することで、あなたのお店が成功する可能性が高まります。

この記事を書いた人

松原元

松原 元(まつばら つかさ)

『社労士・行政書士つかさ事務所』にて士業として中小企業の許認可取得や労務管理のサポートをおこないながら、(株)リーガルシンクでは店舗不動産等の仲介から創業融資などの資金調達支援や補助金・助成金活用まで幅広く経営全般のサポートを提供。

社会保険労務士 行政書士

公認不動産コンサルティングマスター 宅地建物取引士

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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